洗濯機に混合水栓はいらない?後付け費用とお湯の効果を徹底比較

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洗濯機に混合水栓はいらない?後付け費用とお湯の効果を徹底比較

こんにちは。家電ジャーナル運営者の鈴木です。

最近、リフォームや新居への引っ越しを検討されている方から、洗濯機置き場の蛇口について相談を受けることが増えています。

特に多いのが、お湯と水の両方が使える混合水栓にするべきか、それとも普通の単水栓で十分なのかという悩みです。

確かに、ネットで調べてみると洗濯機に混合水栓はいらないといった意見も多く見られますし、わざわざ高額な費用をかけてまで後付け工事をするメリットがあるのか疑問に思いますよね。

毎日のお洗濯でお湯を使えば汚れ落ちが良くなるのは分かっていても、お風呂の残り湯を使ったりバケツで汲んだりする手間を考えると、最初からお湯が出る環境は魅力的に思えるかもしれません。

今回は、そんな迷いをお持ちの方のために、実際の使い勝手やコスト面から、本当に混合水栓が必要なのかを一緒に考えていきたいと思います。

この記事に書いてあること

  1. 混合水栓を導入するメリットと具体的な設置コスト
  2. 賃貸住宅で混合水栓を検討する際の注意点とリスク
  3. お湯がなくても汚れを落とす最新洗濯機と洗剤の進化
  4. ライフスタイル別に判断する混合水栓の必要性

洗濯機に混合水栓はいらない?不要論の真実

洗濯機置き場の前で水栓の交換について悩んでいる日本人女性
混合水栓への交換は本当に必要?ライフスタイルに合わせた冷静な判断が求められます。

かつては「汚れを落とすなら絶対にお湯」と言われていましたが、最近では「洗濯機に混合水栓はいらない」という声も大きくなってきました。

なぜこれほどまでに意見が分かれるのでしょうか。まずは、混合水栓そのものの実力と、それを取り巻く環境の変化について詳しく見ていきましょう。

混合水栓のメリットとデメリット

洗濯機用混合水栓のメリットとデメリットを図解したイラスト。左側の「メリット」では洗剤の溶解性向上、皮脂汚れ除去、予洗いの利便性を、右側の「デメリット」では設置コスト、スペース制約、メンテナンス増加、温度調節の手間をそれぞれアイコンとテキストで説明している。
混合水栓の導入には、利便性とコストの両面で検討が必要です。

洗濯機用の混合水栓とは、キッチンやお風呂の蛇口と同じように、お湯と水を好きな温度に調整して出せる蛇口のことです。これがある最大のメリットは、何と言っても「蛇口をひねるだけで適温のお湯が洗濯機に注がれる」という利便性に尽きます。

具体的なシチュエーションを想像してみてください。冬の寒い朝、冷たい水で洗濯をすると、粉末洗剤が溶け残って衣類に付着してしまうことがありますよね。混合水栓があれば、ぬるま湯を使うことで洗剤の溶解性を劇的に高めることができます。

また、人間の皮脂汚れは30℃〜40℃付近で溶け出す性質があるため、体温に近い温度のお湯を使うだけで、洗剤の力を借りずともある程度の脂汚れを緩ませることができるんです。

さらに、意外と見落とされがちなのが「予洗い」での利便性です。小さなお子さんがいるご家庭での泥汚れや、旦那さんのワイシャツの襟汚れなど、洗濯機に入れる前にちょっと手洗いをしたい場面は多々あります。

そんな時、洗面所まで移動せずとも、洗濯機の真上でサッとお湯を出して予洗いができるのは、家事の時短だけでなく、精神的なストレス軽減にもつながります。

冬場に冷たい水でゴム手袋をして予洗いをする辛さから解放されるだけでも、導入する価値があると感じる方は多いはずです。

一方で、デメリットも無視できません。最も大きな壁はコストですが、それ以外にも「設置スペース」の問題があります。混合水栓は単水栓に比べて本体が大きく、壁から突き出る形状になることが多いです。

そのため、最近の大型化したドラム式洗濯機や、上部に棚を設置している場合、水栓と干渉してしまうケースがあります。

混合水栓の主なデメリット

  1. 設置コストが高い:お湯の配管が来ていない場所への新設は高額な工事費がかかります。壁を壊す必要がある場合、内装工事費も上乗せされます。
  2. メンテナンス箇所が増える:お湯と水、2つのハンドルやパッキンがあるため、単純に水漏れのリスク箇所が2倍になります。また、温度調整機能(サーモスタット)が故障すると、修理費用も高額になります。
  3. 温度調節の手間:サーモスタット付きでない安価なツーハンドルタイプの場合、毎回自分でお湯と水のバランスを調整する必要があります。これを怠ると、熱湯が出て洗濯機を傷めたり、逆に冷水しか出なかったりします。

「あったら便利だけど、維持管理や設置のリスクを考えると、なくてもなんとかなる」という絶妙な立ち位置が、この議論を複雑にしている原因かもしれませんね。

僕としては、予洗いの頻度が週に数回以上あるならメリットが上回りますが、そうでなければ過剰設備になり得ると考えています。

賃貸物件で直面する原状回復の壁

もし皆さんが今、賃貸マンションやアパートにお住まいで、「便利そうだから混合水栓に変えたいな」と考えているなら、少し立ち止まってください。賃貸物件には「原状回復義務」という大きな壁が存在します。

基本的に、賃貸物件に備え付けられている蛇口や給排水設備は、大家さん(オーナー)の所有物です。

電球を交換するような感覚で、入居者が自分の都合で勝手に水栓本体を交換することは契約違反になる可能性が高いです。仮に「自費でやるからいいだろう」と思って交換したとしても、退去する際には元の単水栓に戻さなければならない「原状回復」が求められるのが一般的です。

これは、国土交通省が定めているガイドラインでも、入居者の故意・過失や通常の使用を超えるような設備変更については、入居者が復旧費用を負担すべきという考え方が示されています。

(出典:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』

つまり、導入時の工事費(数万円)だけでなく、退去時の撤去・復旧工事費(数万円)まで負担することになりかねません。合計すると、ちょっとした高級家電が買える金額になってしまいます。

さらに怖いのが「水漏れリスク」です。もし、あなたが手配した業者の工事ミスや、製品の不具合で水漏れ事故が起き、階下の部屋まで水浸しにしてしまったとします。

この場合、本来の設備であれば大家さんが加入している火災保険などでカバーできる範囲も、入居者が勝手に変更した設備が原因となると、保険適用外となったり、あなた自身に重大な過失責任が問われたりする可能性があります。

「大家さんに交渉すればいいのでは?」と思うかもしれませんが、多くの大家さんは水漏れリスクが増えることを極端に嫌います。

特に築年数が経過している物件では、配管自体が弱っていることもあり、触りたくないというのが本音でしょう。「いらない」と判断される大きな理由の一つが、この賃貸特有の、物理的ではない「契約と責任」のハードルの高さにあるのです。

ドラム式なら電気温水で代用可能

ドラム式洗濯機の内蔵ヒーター機能が、従来の混合水栓(ガス給湯)による温水利用をどのように代替するかを図解したイラスト。左側は混合水栓のデメリット(工事費、温度管理、捨て水、手間)を、右側はドラム式内蔵ヒーターのメリット(初期費用込み、正確な制御、効率的、簡単操作)を比較表と共に示し、洗濯機の進化により混合水栓が不要になることを説明している。
最新のドラム式なら、内蔵ヒーターで温水洗浄が可能。混合水栓は不要です。

混合水栓が不要と言われるようになった最大の要因は、洗濯機自体の目覚ましい進化です。特に最近のドラム式洗濯機、そして一部の高級縦型洗濯機には、本体にヒーターを内蔵し、水を温めて洗う「温水洗浄機能」が搭載されているモデルが増えています。

これを使えば、冷たい水からスタートしても、洗濯機の下部にあるヒーターが水を加熱し、自動で設定温度(例えば、洗剤の酵素が活性化する30℃、皮脂が溶ける40℃、除菌ができる60℃など)まで温めてくれます。つまり、蛇口からお湯を引く必要がそもそもなくなるわけです。

「でも、電気代が高いんじゃないの?」と心配される方もいるでしょう。確かに電気でお湯を沸かすコストはかかりますが、混合水栓を使う場合もガス代がかかります。

さらに重要なのが「捨て水」の問題です。給湯器から洗濯機までの距離が長い場合、お湯が出るまでに配管内の冷たい水が数リットル排出されます。

混合水栓を使ってお湯洗濯をしようとしても、最初の数分間は水しか出ず、洗濯槽にある程度水が溜まった頃にやっとお湯が出てくる…というケースが非常に多いのです。これでは、結果的に「ぬるま湯」程度にしかならず、意図した洗浄効果が得られません。

項目混合水栓(ガス給湯)ドラム式内蔵ヒーター
初期費用工事費が高額(配管新設なら5〜10万円)本体価格に含まれる(上位機種のみ)
温度管理配管内の冷水が混ざり、アバウトになりがちセンサーで水温を監視し、正確に制御
エネルギー効率配管の放熱ロスや捨て水が発生必要な少量の水だけを直接加熱するため効率的
手間蛇口側で温度調整が必要な場合があるボタン一つで設定完了

僕自身も温水機能付きのドラム式を使っていますが、例えば「黄ばみを落としたい時は40℃つけおきコース」「においを消したい時は60℃コース」といった使い分けがボタン一つでできるのは非常に便利です。

混合水栓だと、いちいち給湯器の温度設定を変えたり、蛇口で温度を確かめたりする必要がありますからね。

高機能な洗濯機をお持ち、あるいは購入予定なら、混合水栓は機能が重複する「いらない」設備と言えるでしょう。

新築時に検討すべき将来の資産価値

では、これから注文住宅を建てる場合や、スケルトン状態からのフルリノベーションをする場合はどうでしょうか?「ドラム式を買うからいらない」と即決するのは少し待ってください。この場合は、コストと将来性の観点から話が変わってきます。

新築時や壁がない状態であれば、壁の中に給湯配管を通すコストは、後から工事するのに比べて格段に安く済みます。

配管部材費とわずかな手間賃程度で済むことが多く、数千円〜1万円程度の差額で収まることもあります。

しかし、家が完成した後に「やっぱりお湯が欲しい」となって壁を壊して配管を通そうとすると、10万円近い費用がかかることも珍しくありません。

また、ライフスタイルは変化します。今は夫婦二人で高性能なドラム式を使っていても、将来子供が生まれて、泥汚れに強い安価な縦型洗濯機に買い替えるかもしれません。

あるいは、ペットを飼い始めて、散歩後の足を洗ったり、ペット用の毛布を予洗いしたりするために、洗濯機置き場のスロップシンク的な機能が必要になるかもしれません。

将来、親の介護が必要になり、汚れた下着などを頻繁に予洗いする可能性だってゼロではありません。

鈴木
鈴木

新築やスケルトンリフォームのタイミングなら、将来の選択肢を広げる意味で「とりあえず配管だけ通しておく(止水栓で止めておく)」あるいは「混合水栓にしておく」というのは非常に賢い投資です。

「大は小を兼ねる」ではありませんが、インフラ部分は後からの変更が最も大変な箇所なので、初期投資しておく価値は十分にあります。

最新洗剤は低温でも洗浄力を発揮

低温でも高い洗浄力を発揮する最新のジェルボール洗剤を持つ手
洗剤の進化により、常温の水でも十分な洗浄力が得られるようになっています。

もう一つ、見逃せないのが洗剤メーカーの企業努力による「洗剤の進化」です。一昔前の粉末洗剤は、確かにお湯を使わないと溶け残ったり、洗浄成分が十分に働かなかったりすることがありました。しかし、今の洗剤は全く別物と言っても過言ではありません。

最近主流となっている「高濃度液体洗剤」や「ジェルボール」、そして進化した「バイオ酵素洗剤」は、日本の平均的な水道水温である常温(夏場25℃前後、春秋15℃〜20℃)でも、配合されている酵素が活発に働くように分子レベルで設計されています。

洗剤に含まれる酵素(プロテアーゼやリパーゼなど)は、汚れを分解するハサミのような役割を果たしますが、これらは特定の温度帯で活性化します。

現代の洗剤は、あえて低温〜中温でピークを迎えるように調整されており、むしろ60℃を超えるような熱すぎるお湯を使ってしまうと、酵素がタンパク質変性を起こして死んでしまい(失活)、逆に汚れ落ちが悪くなることさえあるんです。

熱湯をかければ殺菌はできるかもしれませんが、汚れを分解する力は失われてしまう可能性があるわけですね。

もちろん、カレーやミートソースなどの油汚れがべっとり付いた場合は、お湯の方が脂が溶けて落ちやすいのは物理的な事実です。

しかし、日常的な汗や皮脂、ホコリ汚れ程度であれば、今の進化した洗剤と水流の力だけで十分に綺麗になります。

鈴木
鈴木

「洗濯=お湯じゃないとダメ」という常識自体が、技術の進歩によって少し古くなっているのかもしれません。

普段の洗濯でそこまで神経質になる必要がないのであれば、わざわざ混合水栓を導入する必然性は低くなります。

洗濯機に混合水栓がいらないと判断する前に

洗濯機置き場の壁内配管を確認する専門業者
後付け工事は壁内の配管状況に大きく左右されます。専門家による確認が不可欠です。

ここまで「不要論」の根拠となる情報を詳しく見てきましたが、それでも「やっぱりお湯が使いたい」「不便を感じたくない」という場面はあるはずです。

ここでは、実際に導入しようとした場合にぶつかる現実的な工事の課題や、混合水栓なしで頑張る場合の代替手段の手間について、さらに深掘りしていきます。

後付け工事の難易度と壁内配管

「今の家に混合水栓を後付けしたい」と思い立った時、一番のネックになるのが物理的な配管工事の難易度です。これは家の構造によって天と地ほどの差があります。

まず、洗濯機置き場の壁のすぐ裏側が、運良くお風呂場や洗面所になっていて、そこに給湯管が通っている場合。このケースは比較的ラッキーで、壁に穴を開けて裏側の配管から分岐させるだけで済むことがあります。しかし、給湯器や他の水回りから距離がある場合、そう簡単にはいきません。

壁の中を通すことができないとなると、選択肢は「露出配管」になります。

これは、壁の外側に配管(モールなどで化粧カバーされたもの)を這わせて、無理やりお湯を持ってくる方法です。

正直なところ、見た目はあまり良くありませんし、配管の上にホコリが溜まりやすく掃除も大変です。

また、冬場は露出している配管内の水が冷えやすく、給湯器からお湯を出しても洗濯機に届く頃には温度が下がってしまうという本末転倒な事態も起こり得ます。

特にマンションの場合、壁がコンクリート(躯体)に直接クロスを貼っているような構造だと、配管を隠すスペースが全くないため、工事自体が不可能なケースも少なくありません。

また、無理な配管工事は接続部分からの水漏れリスクを高めます。洗濯機周りはただでさえ水漏れ事故が多い場所です。設置環境や防水対策については、防水パンの有無も含めて慎重に検討する必要があります。

もしご自宅の洗濯機置き場に防水パンがなく、水漏れリスクについて不安がある場合は、以下の記事も詳しく解説していますので参考にしてみてください。

導入に必要な費用の相場と内訳

実際に業者に依頼した場合、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。

Webサイトなどで「水栓交換 8,000円〜」といった広告を見かけることがありますが、これはあくまで「単純な部品交換」の作業費のみであることがほとんどです。混合水栓を新設する場合は、全く別の次元の話になります。

以下に、現実的な費用の目安をまとめてみました。

工事内容費用相場(材工共)内訳イメージ
単水栓→混合水栓(配管あり)15,000円〜30,000円本体代、交換作業費、廃棄処分費
壁裏給湯管からの分岐新設35,000円〜60,000円本体代、配管部品代、壁開口・補修費、配管作業費
給湯配管の延長工事(露出含む)50,000円〜100,000円以上上記に加え、長い配管部材、モール施工費、出張費など

特に配管新設の場合、現場の状況によって追加費用が発生しやすく、見積もりを取ってみたら10万円を超えていた、というのも珍しい話ではありません。

もし10万円かかるのであれば、その予算で今の洗濯機を下取りに出して、最新の温水機能付き洗濯機に買い替えた方が、資産価値としても日々の利便性としても合理的かもしれません。

この「工事費 vs 洗濯機本体のグレードアップ費」の天秤は、必ずかけるべきです。

水栓交換の手順と業者依頼の推奨

鈴木
鈴木

最近はYouTubeなどでDIY動画が人気で、「水栓交換くらい自分でできる」と考える方もいるかもしれません。

ホームセンターに行けば混合水栓本体は1万5千円〜2万円程度で売っています。

しかし、洗濯機用混合水栓のDIY交換は、僕は強く反対します。

最大の理由は、壁の中の配管(給水管)の状態が見えないからです。特に築年数が経っている建物の場合、壁の中の鉄管が錆びて脆くなっていることがあります。

素人がモンキーレンチで古い水栓を外そうと力を込めた瞬間、「バキッ」という音と共に壁の中で配管がねじ切れてしまう事故が後を絶ちません。

こうなると大惨事です。壁を大きく壊して配管をやり直す必要があり、数十万円規模の修繕工事になります。さらに、その間家中の水道を止めなければならくなってしまいます。

また、取り付け時のシールテープの巻き方が甘かったり、ねじ込み不足だったりして、壁の中でジワジワと水漏れ(漏水)が発生することもあります。これに気づくのは数ヶ月後、壁紙にカビが生えたり、階下から苦情が来たりしてからです。

水回りのトラブルは、自宅だけの問題で済まず、階下への水漏れなど他人を巻き込む大事故につながります。DIYで失敗した場合、火災保険の「個人賠償責任特約」などが適用されないケースもあります。

たかが蛇口と思わず、必ず資格を持った専門業者に依頼してください。

お湯取りやバケツ給水の手間

お風呂場からバケツでお湯を運ぶ大変そうな様子の女性
毎回バケツでお湯を運ぶのは重労働。この手間をどう考えるかが判断の分かれ目です。

混合水栓を導入せずに温水洗濯をする方法として、昔ながらの「お風呂の残り湯」や「バケツでお湯を足す」という手段があります。確かにコストはかかりませんが、これを毎日続けるのは想像以上にハードルが高いです。

まず、お風呂の残り湯ポンプ。付属している洗濯機も多いですが、毎回ホースをセットして、終わったら片付けて…という作業は非常に面倒です。そして何より気になるのが「衛生面」です。

入浴直後のお湯ならまだしも、一晩置いた残り湯は雑菌が数千倍に増殖しているというデータもあります。「洗い」に使うのは良くても、「すすぎ」には絶対に使えませんし、部屋干し臭の原因にもなります。

次に、バケツ給水。「お湯取ります」機能がない場合、洗面所やキッチンからバケツでお湯を運ぶことになりますが、40リットル、50リットルの水を溜めるのに何往復必要でしょうか?

お湯が入った重いバケツを持って浴室と洗濯機置き場を往復するのは重労働で、腰を痛める原因にもなりかねませんし、床にお湯をこぼしてカビの原因を作ることもあります。

「普段は水洗いだけど、月に一度の大掃除だけお湯を使いたい」という場合(例えば洗濯槽のオキシ漬けなど)なら、バケツ給水やシャワーホースを伸ばして給水する方法もアリでしょう。

正しい手順で行えば、設備投資なしで効果を得られます。お湯を使った効果的な掃除方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

寒冷地における水抜きの必要性

ここまで主に「いらない」寄りの話をしてきましたが、もしお住まいの地域が北海道や東北、北陸などの寒冷地である場合は、話が全く別になります。寒冷地では、冬場に水道管が凍結し、膨張した氷によって配管や水栓が破裂する事故が多発します。これを防ぐため、水栓には必ず「水抜き」機能が必要になります。

一般的な単水栓であれば、水抜き操作は比較的シンプルですが、混合水栓は構造が複雑(お湯と水、2系統の弁がある)なため、水抜きの手順も複雑になります。製品によっては、自動で水抜きを行う高価な寒冷地仕様モデルもありますが、それでも構造が複雑な分、凍結リスクのある箇所は増えます。

万が一の水抜き忘れや操作ミスによる配管破裂は、家全体に甚大な被害をもたらします。

そのため、寒冷地においては、あえてリスクの低いシンプルな単水栓(寒冷地仕様)を選び、洗濯時のお湯については洗濯機本体のヒーター機能や、直結していないバケツ給水などで賄うという選択が、住宅のリスク管理として理にかなっている場合が多いのです。

この点については、地元の水道業者さんや工務店さんの意見を最優先にすることをお勧めします。

「混合水栓はいらない?」という疑問に関するQ&A

Q:お湯で洗う場合、何度くらいの設定温度が一番汚れが落ちますか?

A:一般的に、皮脂汚れが最も落ちやすいのは「40℃前後」です。これは人間の体温より少し高く、脂が溶け出す温度だからです。ただし、血液汚れなどは高温で固まる性質があるため水洗いが推奨されます。また、60℃以上のお湯は衣類を傷めたり、洗濯機の給水ホース(耐熱温度が50℃程度のものが多い)を劣化させたりするリスクがあるため、家庭での洗濯では40℃が最適解と言えます。

Q:ガス給湯器のお湯と洗濯機の内蔵ヒーター、電気代はどちらが安いですか?

A:状況によりますが、最近のヒートポンプ式ドラム洗濯機などの場合、「洗濯機の内蔵ヒーター」の方がトータルコストが安くなる傾向にあります。ガス給湯の場合、蛇口までお湯が来るまでの「捨て水」の水道代がかかることや、配管内での熱ロスがあるためです。洗濯機の内蔵ヒーターは必要な少量の水だけをダイレクトに温めるため、エネルギー効率が非常に高いのが特徴です。

Q:賃貸ですが、大家さんに許可をもらえば混合水栓に交換しても良いですか?

A:許可が下りれば可能ですが、費用対効果を慎重に考える必要があります。退去時に「原状回復(元の単水栓に戻すこと)」を条件とされることが多く、その場合、設置時と撤去時で二重の工事費がかかります。また、水漏れ事故が起きた際の責任区分が複雑になるため、多くの大家さんや管理会社は難色を示すのが一般的です。

Q:混合水栓を使わずに、お風呂の残り湯を使うデメリットはありますか?

A:最大のデメリットは「雑菌」と「手間」です。一晩経った残り湯は雑菌が増殖しており、臭いの原因になります。また、入浴剤が入っていると衣類に変色リスクがあります。残り湯は「洗い」のみに使用し、「すすぎ」には必ず綺麗な水道水を使う必要がありますが、ホースの準備や片付けの手間を考えると、毎日続けるのはなかなかハードルが高い方法です。

結論:洗濯機に混合水栓がいらない人はこんな人

最後に、これまでの内容をまとめて、あなたのライフスタイルにとって「混合水栓がいらない」のか、それとも「必要」なのかを整理してみましょう。

混合水栓が「いらない」人(多数派)

  • 高機能洗濯機ユーザー:温水機能付きのドラム式洗濯機を使っている、または購入予算がある。
  • 賃貸居住者:原状回復義務があり、将来的に引っ越す可能性がある。
  • 汚れが軽度:日常の汚れ(汗、ホコリ)がメインで、泥だらけの服や作業着を洗う機会が少ない。
  • コスト重視:数万円〜10万円の工事費をかけるなら、他の家電や生活費に回したい。

逆に「検討しても良い」人

  • 新築・リノベ検討中:壁内配管のコストが安く、将来の資産価値やライフスタイルの変化に備えたい。
  • 縦型洗濯機派:安価な縦型洗濯機を愛用しているが、洗浄力にはこだわりたい。
  • ヘビーユーザー:スポーツをする子供や現場仕事の家族がいて、毎日大量の泥汚れ・油汚れの予洗い(手洗い)が必須。

現代の洗濯機と洗剤の進化を考えれば、多くのご家庭にとって「洗濯機 混合水栓 いらない」という判断は、決して手抜きではなく、合理的で賢い選択だと言えます。

無理に設備にお金をかけるよりも、その分を良い洗剤や、高性能な洗濯機本体への投資に回す方が、結果的に満足度の高い洗濯環境が手に入るはずです。

ご自身のライフスタイルと予算を天秤にかけて、最適な選択をしてくださいね。