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こんにちは。家電ジャーナルの鈴木です。
普段のお風呂掃除で活躍するカビキラースプレーですが、洗濯槽やパッキンの黒カビを見つけたときにこれを使えば一発できれいになるのではないかと考えたことはありませんか。
手元にある強力な洗剤で済ませられたら楽ですし、何よりあの泡なら頑固な汚れも落としてくれそうな期待感がありますよね。
ただ、なんとなく洗濯機に使っていいのか不安だったり、故障の原因になるという噂を耳にしたりして、実際のところどうなのか迷っている方も多いはずです。
この記事では、メーカーの推奨や製品の特性を踏まえたうえで、洗濯機に対するカビキラーの正しい使いどころと、絶対に避けるべき危険な使い方について詳しく解説します。
この記事に書いてあること
- お風呂用のカビキラースプレーを洗濯機に使用できる条件と具体的なリスク
- ドラム式洗濯機のゴムパッキンに生えた黒カビを安全に落とすための裏技
- 縦型洗濯機の洗濯槽にスプレータイプを使ってはいけない明確な理由
- 洗濯機を壊さずにカビを撃退するための専用クリーナーとの正しい使い分け
洗濯機にカビキラースプレーを使うリスクと可否

結論から言うと、お風呂用のカビキラースプレーは洗濯機の「特定の場所」には効果抜群ですが、「洗濯槽の中」に使ってしまうと故障やサビの大きな原因になります。
ここでは、なぜ場所によって向き不向きがあるのか、その科学的な理由とリスクについて深掘りしていきましょう。
ドラム式のゴムパッキンへの使用は有効

ドラム式洗濯機を使っている方にとって最大の悩みといえば、ドアの周りにあるゴムパッキン(ドアガスケット)の黒カビですよね。購入したばかりの頃は綺麗なグレーだったパッキンも、気付けば黒い点々が無数に広がっていて、ゾッとした経験がある方も多いのではないでしょうか。
この場所は、洗濯機の構造上どうしても水が溜まりやすく、しかも乾きにくいという、カビにとって最高の環境が整っています。さらに厄介なのが、通常の「槽洗浄コース」を使っても、水が溜まるのはパッキンよりも下の部分までであることが多く、肝心のパッキンのひだ部分には洗剤液が十分に浸からないというジレンマがあるのです。

実は、このゴムパッキン部分こそが、カビキラースプレー(泡タイプ)の独壇場です。
液体タイプの洗濯槽クリーナーでは、重力ですぐに流れ落ちてしまい、カビの根に浸透する時間を稼ぐことができません。
しかし、お風呂用のカビキラーは、垂直な壁面にも張り付くように設計された「高粘度の泡」が特徴です。この泡の特性を利用することで、液だれしやすいパッキンの溝にも薬剤を密着させ続けることが可能になります。
もちろん、これはメーカーが公式に推奨する方法ではありませんが、物理的に薬剤を届かせる手段としては非常に理にかなっています。「浸け置きできないなら、貼り付ければいい」という発想ですね。
ただし、ゴムへのダメージなどのリスクも伴いますので、後述する正しい手順を守ることが絶対条件となります。
縦型洗濯機へのスプレー使用が適さない理由

一方で、縦型洗濯機の洗濯槽にカビキラーをスプレーしようと考えているなら、それは今すぐ思いとどまってください。ほとんど意味がないばかりか、洗濯機を壊してしまうリスクが極めて高い行為です。
まず効果の面ですが、縦型洗濯機の洗濯槽は垂直に立っているステンレスの筒です。ここにお風呂用のカビキラーを吹き付けても、一瞬で重力に負けて下へ流れ落ちてしまいます。
カビを殺菌・漂白するためには、ある程度の時間、高濃度の薬剤が汚れに接触し続ける「接触時間(Dwell Time)」が必要不可欠です。流れ落ちてしまった泡は底に溜まるだけで、壁面のカビにはほとんど作用しません。
さらに深刻なのが故障のリスクです。洗濯槽の上部には、脱水時のバランスを取るための液体バランサーや、外槽と内槽の隙間など、水が入ることを想定していない箇所が存在します。
スプレーの勢いで薬剤が飛び散り、これらの隙間から侵入してしまうと、裏側にあるモーターの軸受け、回転センサー、制御基板などの重要な電気部品に付着する恐れがあります。
カビキラーの成分である次亜塩素酸ナトリウムは、金属を腐食させる性質だけでなく、電気を通す電解質でもあります。もし基板や端子にかかってしまえば、絶縁不良によるショート、誤動作、最悪の場合は発火事故につながる可能性さえあります。
「ちょっとカビが見えたから」という軽い気持ちでのスプレーが、数万円から十数万円の修理代に化けてしまう可能性があるのです。
泡センサーのエラーや故障を引き起こすリスク
「カビキラー(浴室用)」と「洗濯槽クリーナー」の決定的な違いの一つに、「泡立ち(レオロジー)」があります。お風呂用のカビキラーは、タイルの目地や壁にへばりつくために、あえてモコモコとした豊かな泡ができるように界面活性剤が調整されています。
しかし、近年の洗濯機、特にドラム式洗濯機にとって、この「大量の泡」は非常に厄介な存在です。ドラム式洗濯機は、少ない水でたたき洗いをする構造上、泡が多すぎるとクッションになって洗浄力が落ちたり、泡が溢れて機械内部に入り込んだりする危険があります。
そのため、多くの機種には「泡センサー」が搭載されており、泡立ちすぎを検知すると自動的に排水したり、泡消し運転を行ったりする機能が付いています。

もし槽内にカビキラーを大量にスプレーして運転を開始すると、センサーが「異常発泡」を検知し、エラーコードを表示して運転が止まってしまう可能性が高いです。
こうなると、いつまで経っても掃除が完了しないだけでなく、大量の泡が排水経路や圧力センサーのチューブ内に入り込み、通常の洗濯ができなくなるという二次被害も招きます。
メーカー側も、ドラム式洗濯機には泡立ちの少ない液体タイプのクリーナーを使用するよう注意喚起を行っています。
公式見解の確認
ジョンソン株式会社のFAQでも、ドラム式洗濯機に対しては泡消し機能の誤作動を防ぐため、泡立ちの多いタイプではなく、専用の液体タイプ(洗たく槽カビキラーなど)を使用するよう案内されています。
専用の洗濯槽クリーナーとカビキラーの違い

成分表を見ると、どちらも主成分は「次亜塩素酸ナトリウム」と「水酸化ナトリウム」と書いてあるので、「中身は同じでしょ?値段が高いだけでは?」と思われがちです。
しかし、そこには決定的な違いが隠されています。それは「金属を守る成分(防錆剤)」が入っているかどうかです。
| 製品タイプ | 主な用途 | 防錆剤(腐食抑制剤) | 泡立ち |
| 洗濯槽クリーナー(塩素系) | ステンレス槽の洗浄 | 高配合(金属保護必須) | 低い(すすぎ性重視) |
| お風呂用カビキラー | タイル・樹脂の洗浄 | なし / 少量 | 高い(密着性重視) |
洗濯機のドラムに使われているステンレス(SUS304など)は、非常に錆びにくい金属ですが、決して「錆びない」わけではありません。
表面の薄い酸化皮膜(不動態皮膜)によって守られていますが、高濃度の塩素イオン(塩分)に長時間さらされると、この皮膜が局所的に破壊され、「孔食(Pitting Corrosion)」と呼ばれる微細な穴が開く腐食現象が起こります。
専用の洗濯槽クリーナーには、この腐食反応を抑えるための防錆剤(ケイ酸塩など)がたっぷりと配合されており、長時間浸け置きしてもドラムを傷めない設計になっています。
一方、お風呂用のカビキラーにはその配慮が必要ないため、防錆剤が含まれていないか、ごく微量です。これをステンレス槽に直接スプレーして放置することは、自ら洗濯機にサビの種を撒いているようなもの。洗濯機の寿命を縮めないためにも、槽全体の掃除には必ず「防錆剤入り」の専用品を選んでください。
また、塩素系のツンとする臭いが苦手な方や、汚れを溶かすのではなく「剥がして落とす」視覚的な達成感が欲しい方には、酸素系漂白剤(オキシクリーンなど)も選択肢に入ります。
ただし、ドラム式での使用には注意点がありますので、詳しくは以下の記事も参考にしてみてください。
洗剤投入ケースなどのパーツ洗浄は可能
ここまで「洗濯槽への使用はNG」とお伝えしてきましたが、本体から取り外せるパーツに関しては話が別です。カビキラーを積極的に活用しても問題ないエリアと言えます。具体的には以下のような部品です。
- 洗剤・柔軟剤の投入ケース
- 糸くずフィルター(プラスチックのメッシュ部分)
- 乾燥フィルター
これらの部品は、主にポリプロピレン(PP)などの耐薬品性が非常に高いプラスチック樹脂で作られています。しかも、洗濯機本体から取り外して、お風呂場や洗面所で単体として洗えるため、機械内部への液垂れやサビのリスクを気にする必要がありません。
特に洗剤投入ケースの裏側は、柔軟剤の成分が固まって黒カビ(クラドスポリウム)の温床になりやすく、放置すると洗濯水にカビが混入する原因になります。
こうしたパーツのぬめりや黒ずみが気になったら、お風呂場に持って行き、カビキラーをシュッと吹きかけて5分ほど放置してください。あとはシャワーで洗い流すだけで、ブラシでこすらなくても新品同様の白さが蘇ります。
洗濯機のカビキラースプレーを用いた正しい掃除手順

それでは、唯一の推奨ポイントである「ドラム式洗濯機のゴムパッキン」への使用について、具体的な実践手順を解説します。
ただ漫然とスプレーするだけでは、液垂れして効果が出ないどころか、ゴムを劣化させる原因にもなります。プロも実践する「湿布法」で、安全かつ確実にカビを撃退しましょう。
パッキンのカビを落とす湿布法の正しい使い方
ゴムパッキンのカビ取りで最も重要なのは、「薬剤を垂らさないこと」と「乾燥させないこと」の2点です。以下のステップバイステップの手順で行うのが最も効果的です。
- 水分を徹底的に拭き取る: まず、パッキンの裏側や溝に溜まっている水、ホコリ、髪の毛などをキッチンペーパーで完全に拭き取ります。
水分が残っていると薬剤が薄まってしまい、殺菌効果が激減します。ここが勝負の分かれ目です。 - ペーパーに薬剤を含ませる(直接スプレー禁止): カビキラーをパッキンに向かって直接噴射するのは避けてください。曲面で跳ね返った薬剤が目に入ったり、衣類についたりするリスクがあります。
一度キッチンペーパーや使い古した布にスプレーして十分に染み込ませ、それをカビが発生している部分に貼り付けるようにしましょう。 - ラップでパックする(ラッピング): 薬剤を含ませたペーパーを貼り付けたら、その上から食品用ラップで覆います。
これにより、薬剤の蒸発を防いで浸透力を維持すると同時に、強烈な塩素臭が周囲に広がるのを抑える効果もあります。
ゴムの劣化を防ぐための放置時間は15分程度
「頑固なカビだから、半日くらい置いておこう」と考えるのは非常に危険です。パッキンの素材である合成ゴム(EPDMなど)は、基本的には丈夫な素材ですが、高濃度のアルカリや塩素に長時間さらされ続けると、化学的な劣化(加水分解やポリマー鎖の切断)を起こします。
劣化が進むと、ゴムが弾力を失って硬化したり、逆にふやけてベタベタになったり、最悪の場合はひび割れが発生して水漏れの原因になります。放置時間は15分から長くても30分以内を厳守してください。
もし一度で黒ずみが落ちきらない場合は、無理に長時間放置するのではなく、一度洗い流してから日を改めて再チャレンジする方が、ゴムへのダメージを最小限に抑えられます。
使用後は成分が残らないよう十分にすすぐ
ラップとペーパーを取り外した後は、水で濡らした雑巾で薬剤を念入りに拭き取ってください。特にパッキンの裏側の溝(ひだの奥)は拭き残しが発生しやすいポイントです。
ここに高濃度の塩素成分が残ったまま洗濯をしてしまうと、次に入れたお気に入りのジーンズや色柄物のタオルに薬剤が付着し、そこだけ色が抜けてオレンジ色に変色してしまうという悲劇が起こります。
手拭きで大まかに拭き取った後は、洗剤を入れずに「すすぎ1回+脱水」のコースで空運転を行いましょう。これで配管や見えない部分に残った成分も、大量の水で希釈・排出され、安全な状態に戻ります。
酸性タイプと混ぜるな危険等の注意点

家庭内での化学物質事故を防ぐために、絶対に守っていただきたいのが「混ぜるな危険」のルールです。カビキラーなどの塩素系漂白剤は、酸性の物質と混ざると、直ちに反応して有毒な塩素ガス(Cl2)を発生させます。
これらと絶対に併用しないでください
- クエン酸(水垢掃除や柔軟剤代わりに使用するもの)
- お酢・ビネガー
- 酸性タイプのトイレ用洗剤
- 一部の強力な水垢取り洗剤
「洗濯機にお酢なんて入れないよ」と思うかもしれませんが、最近はナチュラルクリーニングの一環として、水垢除去のためにクエン酸を使ったり、柔軟剤の代わりにクエン酸水を使ったりする方も増えています。
もし排水口付近やパッキンの隙間にクエン酸成分が残留していた場合、そこにカビキラーが触れるとガスが発生するリスクがあります。
作業を行う際は、必ず換気扇を「強」で回し、可能であれば洗面所の窓も開けて、空気の通り道を確保してください。もし目に染みるような刺激臭を感じたら、すぐに作業を中断してその場を離れましょう。
また、洗濯機周りの臭いが気になって掃除を始めたものの、カビキラーでは解決しない場合、その原因は排水口の奥にあるかもしれません。安全な排水口メンテナンスについては、以下の記事で詳しく解説しています。
色素沈着して黒カビが落ちない場合の対処法
正しい手順で掃除を行い、カビのヌメリや立体的な汚れは取れたはずなのに、どうしても黒いシミのような跡が消えないことがあります。これは、カビの菌糸がゴムの微細な隙間の奥深くまで入り込み、カビが生成した色素がゴムの素材そのものに「沈着」してしまっている状態です。
例えるなら、白いTシャツに醤油をこぼして時間が経つと、洗っても茶色いシミが残るのと同じような現象です。残念ながら、このレベルまで進行した色素沈着は、どれだけ強力なカビキラーを使っても完全に白く戻すことは困難です。
ただし、菌自体は死滅しているので、衛生面での問題や、臭いの原因になることはほとんどありません。
機能上は問題なく使い続けられますが、もしどうしても見た目が気になる場合や、ゴム自体がボロボロになってきている場合は、無理に掃除を続けるよりも、メーカーに依頼してパッキン自体を新品に交換修理することをおすすめします。
カビキラースプレー使用に関するよくある質問(Q&A)
Q:キッチン用の泡ハイターでも代用できますか?
基本的には代用可能です。キッチン泡ハイターも浴室用カビキラーも、主成分は同じ「次亜塩素酸ナトリウム」と「界面活性剤」ですので、ドラム式のゴムパッキンに使用する分には同様の効果が得られます。ただし、防錆剤が含まれていないため、洗濯槽内部(ステンレス部分)に使ってはいけないというリスクもカビキラーと全く同じです。使用箇所をパッキンのみに限定して使用してください。
Q:誤って洗濯槽の中に大量にスプレーしてしまった場合は?
焦らずに、すぐに大量の水ですすぎ流してください。洗剤を入れずに「最大水位」で「洗い・すすぎ・脱水」のコースを運転します。ドラム式で泡センサーが反応してエラーが出る場合は、一度電源を切り、泡が消えるまで少し待ってから「脱水」のみを行い、その後に改めてすすぎ運転を行って成分を完全に除去してください。
Q:掃除の後、洗濯機から塩素の臭いが取れない時は?
すすぎが不足しており、配管などに成分が残留している可能性があります。もう一度、洗剤なしで標準コース(洗い〜脱水)を空運転してください。それでも臭いが気になる場合は、ぬるま湯(40度程度)を使って空運転すると塩素成分が分解・揮発しやすくなり、臭いが抜けやすくなります。その際は必ず換気を行ってください。
Q:パッキンの掃除はどのくらいの頻度で行うのが理想ですか?
黒カビが見えたら「すぐに」行うのがベストですが、予防としては1〜2ヶ月に1回程度が目安です。月1回の「専用クリーナーによる槽洗浄」のタイミングに合わせて、パッキン部分のチェックとスプレーでのメンテナンスを行うルーティンを作ると、ゴムへの色素沈着を防ぐことができます。
洗濯機のカビキラースプレー使用に関するまとめ
- 使える場所は限定的:ドラム式のゴムパッキン(湿布法)、取り外せる洗剤ケースなどのプラスチック部品には有効。
- 槽内への直接噴射はNG:ステンレス槽は防錆剤が入っていない洗剤に弱く、サビの原因になるため絶対禁止。
- 縦型にはメリットなし:スプレーはすぐに流れ落ちるため洗浄効果が薄く、電装部品への液垂れ故障リスクが高い。
- 放置時間は厳守:ゴムパッキンへの使用は15〜30分以内。長時間放置はゴムの劣化を招く。
- 専用品との使い分け:槽全体のメンテナンスには、防錆剤入りで泡立ちが制御された「洗濯槽専用クリーナー」を使用する。
洗濯機のカビ対策で大切なのは、適材適所の判断です。
手軽で強力なカビキラースプレーは、パッキンのようなピンポイントのカビ退治には最強の武器になりますが、デリケートな洗濯槽全体の掃除には、やはり機械を守るように設計された専用クリーナーが一番安全で確実です。
正しい知識と使い分けで、大切な洗濯機を長く清潔に使っていきましょう。