洗濯機の糸くずフィルターの仕組み解説!掃除や交換のコツも紹介

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洗濯機の糸くずフィルターの仕組み解説!掃除や交換のコツも紹介

こんにちは。家電ジャーナルの鈴木です。

洗濯機を使っていると、糸くずフィルターの掃除や交換のタイミングについて悩むことはありませんか。

せっかく洗濯したのにゴミが取れない、あるいはすぐに詰まるといったトラブルを経験する方も多いかもしれません。

実は、パナソニックや日立といったメーカー別の仕様や、縦型とドラム式の違いによって、その仕組みは大きく異なります。

この小さな部品の役割を正しく理解することは、衣類をきれいに保つだけでなく、故障を防ぐためにも非常に重要です。

今回は、意外と知らないフィルターの構造から、正しいお手入れ方法までを詳しくお話しします。

この記事に書いてあること

  1. 縦型とドラム式で全く異なるフィルターの役割と構造
  2. ゴミがうまく取れない原因と衣類への再付着を防ぐ方法
  3. 黒カビやぬめりを撃退する酸素系漂白剤を使った掃除術
  4. メーカーごとの特徴的な機能と交換時期の目安

洗濯機の糸くずフィルターの仕組みと役割

縦型洗濯機用のネット型糸くずフィルターとドラム式洗濯機用の排水フィルターの比較画像
洗濯機のタイプによってフィルターの形状と役割は大きく異なります。

まずは、洗濯機の種類によって大きく異なるフィルターの基本的なメカニズムについて解説します。ここを理解すると、なぜ掃除が必要なのかがはっきりと見えてきます。

単なる「ゴミ受け」と思われがちですが、実は流体力学や機械工学の観点から見ても非常に理にかなった設計がなされている重要なパーツなのです。

縦型洗濯機の循環濾過システムを解説

縦型洗濯機の断面図を用いた循環濾過システムの解説イラスト。底にあるパルセーター(回転羽根)が回転して青い矢印で示された上昇水流(アップフロー)が発生し、ゴミを含んだ懸濁液が壁面の糸くずフィルターの取り込み口に流れ込む様子が描かれている。フィルター部分の拡大図では、濁った水がメッシュ(網)を通過する際に繊維くずなどのゴミが物理的に遮断され、浄化された水が再び洗濯槽に戻るサイクルが示されている。
縦型洗濯機の「循環濾過システム」

縦型洗濯機をお使いの皆さんは、洗濯槽の内側にあるフィルターがどのようにしてゴミを集めているか、その具体的な「動き」を想像したことはあるでしょうか。実は、縦型洗濯機の糸くずフィルターは、単に水の中に漂っているゴミをすくっているのではなく、計算された水流サイクルによって機能する高度な「循環濾過システム」の一部なのです。

縦型洗濯機の心臓部であるパルセーター(底にある回転羽根)は、回転することで強力な渦巻き水流を作りますが、同時にポンプのような役割も果たしています。パルセーターによって勢いよく押し出された水は、遠心力によって洗濯槽の底から壁面に沿って上昇していきます。この上昇水流(アップフロー)の通り道に、ちょうど罠を仕掛けるように配置されているのが糸くずフィルターです。

洗濯中の水は、洗剤や汚れ、そして衣類から剥がれ落ちた無数の繊維くず(リント)が混ざり合った「懸濁液(サスペンション)」という状態になっています。もしフィルターがなければ、この繊維くずはずっと槽内を回り続け、最終的に再び衣類の繊維の隙間に入り込んでしまいます。これを防ぐため、メーカーは洗濯槽内の水を一回の洗濯工程の中で何度も何度もフィルターに通す設計にしています。

鈴木
鈴木

具体的には、壁面を上昇してきた水流がフィルターの取り込み口から入り、メッシュ(網)を通過して再び槽内に戻るというサイクルを繰り返します。

このとき、水分子や洗剤の成分はメッシュを素通りしますが、繊維くずや髪の毛といった大きな固形物は物理的に遮断され、袋の中に溜まっていきます。

つまり、縦型洗濯機は「洗い」や「すすぎ」を行っている間、常に水を浄化し続けているわけです。

最近主流になりつつあるプラスチックケース型(カセット式)も、昔ながらのネット型(袋状)も、この「水を循環させて濾す」という基本原理は同じです。しかし、この仕組みには一つだけ弱点があります。

それは「水流がフィルターの位置まで届かないと機能しない」という点です。水量が少ない場合や水流が弱いコースでは、水がフィルターの吸込口まで上がってこないことがあり、その間は濾過機能が停止してしまいます。これが、「少量の洗濯物だとゴミが取れにくい」という現象の正体です。

縦型とドラム式の洗浄方式の違いや、それぞれのメリットについては、以下の記事でも詳しく比較解説していますので、あわせてご覧いただくとより理解が深まるかと思います。

ドラム式は排水フィルターが重要

ドラム式洗濯機の内部構造を示した透視図解。ドラム内で衣類が持ち上げられ落下する「たたき洗い」の様子と少量の水が描かれている。ドラム下部から出る「ゴミ・異物を含む排水」は「排水フィルター」を通過し、そこで異物が「トラップ型濾過」によって捕獲されている。フィルターの先には「排水ポンプ」があり、「ポンプを守る最後の砦」というラベルが添えられ、異物が取り除かれた水が機外へ排出される流れが青い矢印で示されている。
ドラム式洗濯機の排水の仕組み

さて、次にドラム式洗濯機のお話です。ドラム式を使っている方は、フィルターの位置が縦型とは全く違う場所、多くは本体の下部にあることに気づいているはずです。そして、メーカーによってはこれを「糸くずフィルター」ではなく「排水フィルター」と呼んでいます。呼び方が違うのには、決定的な理由があります。

ドラム式洗濯機は、縦型のように大量の水を溜めて循環させるのではなく、極めて少ない水で衣類を持ち上げて落とす「たたき洗い」を行います。水量が少ないため、縦型のような循環濾過システムを搭載することは構造的に難しく、また効率的でもありません。そのため、ドラム式の洗浄中には、基本的に糸くずを除去する積極的な仕組みは働いていないことが多いのです(一部の上位機種を除く)。

では、なぜフィルターが存在するのか。その最大の目的は、「洗濯機を守ること」です。洗濯中に出た糸くず、ポケットに入れたままだった硬貨、ヘアピン、ボタンなどは、すすぎが終わると汚れた水と一緒に機外へ排出されます。この排水経路の途中には、水を吸い出して排水するための強力な「排水ポンプ」があります。

もし、このポンプの羽根車(インペラ)に硬貨や大量の糸くずが噛み込んでしまったらどうなるでしょうか。ポンプはロックし、モーターが焼き付いたり、羽根が破損したりして、重大な故障に直結します。

ドラム式の排水フィルターは、この排水ポンプの手前に設置された「最後の砦」なのです。汚れた水がポンプに到達する直前で、危険な異物やゴミをトラップ(捕獲)し、ポンプを保護しています。

これを「トラップ型濾過」と呼ぶこともできます。したがって、ドラム式のフィルターは「衣類をきれいにするため」というよりも、「機械を壊さないため」に存在していると言っても過言ではありません。

この仕組み上、ドラム式のフィルターが詰まることは、即座に「排水不能」を意味します。縦型ならフィルターが詰まっても洗濯自体は続行できますが、ドラム式の場合は水が抜けなくなり、センサーが異常を検知して「U11」などのエラーコードを表示し、強制停止します。

最悪の場合、槽内に水が残ったままドアが開かなくなり、修理業者を呼ぶまで洗濯物が取り出せないという事態にもなりかねません。ドラム式ユーザーにとってフィルター掃除は、選択肢ではなく義務なのです。

排水トラブルに関連して、排水溝の臭いや詰まりが気になる場合は、以下の記事でプロ直伝の対策を紹介しています。フィルターだけでなく、その先の排水環境も整えておくことが大切です。

ゴミが取れない原因と再付着の問題

洗濯後の黒いTシャツに白い糸くずやリントが再付着してしまっている様子
フィルターが目詰まりしたり水位が低いと、一度取れたゴミが再び衣類に付く原因に。

「毎回フィルターを掃除しているのに、なぜかゴミが全然溜まらない」「洗い上がった黒いTシャツに白い糸くずがびっしり付いている」。こんなストレスを感じたことはありませんか?これらは単なる偶然ではなく、流体力学的な不具合や使い方のミスマッチによって引き起こされる「必然」の現象です。

まず最も多い原因は、先ほど少し触れた「水位と水流の関係」です。特に縦型洗濯機で「節水モード」や「手動での低水位設定」を多用している場合、循環水流の勢いが弱くなり、フィルターの吸込口まで水が到達していない可能性があります。水がフィルターを通らなければ、当然ゴミは一つも取れません。この場合、水量を一段階上げるだけで、劇的にゴミが取れるようになることがあります。

次に疑うべきは、フィルター自体の「バイパス(抜け道)」の発生です。例えば、ネット型フィルターの場合、長く使っているとネットの繊維が摩耗して小さな穴が開いたり、縫い目がほつれたりします。水というものは正直で、抵抗のあるフィルターの網目を通るよりも、抵抗のない穴や隙間を優先的に流れようとします。

たとえ針の穴程度の小さな破れでも、そこが「メインの通り道」となってしまい、一度捕まえたゴミまでそこから再放出されてしまうのです。

また、プラスチックケース型の場合、ケースの爪が折れていたり、パッキンが劣化していたりして、装着時にガタつきがあると、ケースと枠の隙間から水が漏れ出します。これもまた、フィルター機能を無効化させる大きな要因です。

ポイント

そしてもう一つ、見落としがちなのが「浮き型ネット(市販品)」の弊害です。

備え付けのフィルターでゴミが取れないからといって、100円ショップなどで売られているボール状の浮き型ネットを洗濯槽に入れる方がいますが、これは諸刃の剣です。最近の洗濯機は、複雑な水流制御で衣類を動かしています。

そこに異物であるネットを投入すると、計算された水流が乱れ、洗浄力が低下したり、逆に衣類とネットが絡まって生地を傷めたりするリスクがあります。特に、水流センサーを搭載した最新機種ではエラーの原因になることもあるため、安易な追加はおすすめしません。

再付着(再汚染)は、脱水工程で発生することが多いのも特徴です。洗濯液の中に浮遊していた繊維くず(リント)は、排水時にある程度流れていきますが、脱水で強い遠心力がかかると、水と一緒に衣類の繊維の間を通過しようとします。

このとき、リントが繊維に「濾し取られる」形で引っかかってしまうのです。これを防ぐ唯一の方法は、脱水に入る前の「洗い」と「すすぎ」の段階で、フィルターを使って可能な限り浮遊物を除去しきることしかありません。

黒いカスやカビ汚れが発生する理由

洗濯が終わった後の衣類に、茶褐色や黒色のピロピロとしたワカメのような物体が付着していたら、それは間違いなく洗濯槽やフィルター内で繁殖した「カビ(バイオフィルム)」の剥がれカスです。

糸くずフィルターという場所は、微生物にとってこの上なく快適な「楽園」です。まず、洗濯直後は適度な水分があります。

そして、洗濯槽の位置によっては温度も保たれやすく、何より「洗剤の溶け残り」「石鹸カス(スカム)」「衣類から出た皮脂汚れ」という豊富な栄養源が毎回供給されます。水分、温度、栄養。この3つの条件が揃ったとき、爆発的に増殖するのが「黒カビ(Cladosporium)」や「赤カビ(Rhodotorula)」です。

特に問題なのが、黒カビが形成する「バイオフィルム」です。最初は目に見えない小さな菌糸がネットの繊維の奥深くに根を張り、自分たちを守るために粘着性のある膜を作り出します。この膜ができると、単に水で流しただけでは絶対に落ちません。ブラシでこすっても表面が取れるだけで、根っこは残っているため、すぐにまた再生します。

鈴木
鈴木

恐ろしいのは、カビに汚染されたフィルターを使い続けることの意味です。縦型洗濯機の場合、循環水流は必ずフィルターを通ります。

つまり、フィルターがカビだらけであれば、洗濯機は「カビの胞子をたっぷり含んだ水」を循環させ、それを衣類全体にシャワーのように浴びせていることになるのです。

これでは、いくら高級な洗剤を使っても、洗い上がった衣類が生乾き臭くなったり、アレルギーの原因になったりするのは当然です。

この「ワカメ状の汚れ」を根こそぎ除去するための具体的な手順や、オキシクリーンを使った徹底洗浄の方法については、以下の記事で詳細なガイドを書いています。もし黒いカスにお悩みなら、この記事を読んだ後、すぐに実践してみてください。

フィルター掃除と正しい洗い方のコツ

「フィルター掃除はどのくらいの頻度でするべきですか?」と聞かれたら、僕は迷わず「洗濯機を回すたび、毎回です」と答えます。これは単なる理想論ではなく、メーカー各社も公式に推奨している運用ルールです。

例えばパナソニックの公式サイトでも、乾燥フィルターや排水フィルターのお手入れ頻度について「週1回程度」や「乾燥運転のたび」といった具体的な目安が明記されています(出典:パナソニック公式「定期的なお手入れで、キレイな仕上がりが続きます」)。

具体的な掃除のコツ

まず、ゴミを捨てるタイミングです。一般的には「濡れているうち」に行うのが基本です。

乾燥してしまうと、微細な汚れがメッシュに固着し、剥がれにくくなるためです。

ただし、ネット型フィルターの場合に限り、「カラカラに乾いてからのほうが、大きなゴミはペロリと剥がれやすい」という裏技的な側面もあります。

しかし、濡れたまま放置する時間が長ければ長いほど雑菌は増殖するので、衛生面を最優先するなら、やはり洗濯直後の清掃がベストです。

【プロ直伝】フィルター掃除の鉄則

  1. 「逆洗」の原理を使う: これが最も重要です。フィルターのメッシュに詰まった細かい粒子は、水流によって表側(内側)から押し込まれています。これを掃除するときに表側からブラシでこすると、汚れをさらに奥へと押し込んでしまい、目詰まりを悪化させます。必ず「裏側(外側)」からシャワーの水圧を当てたり、ブラシを入れたりして、汚れを押し出すように洗ってください。
  2. ブラシ選びにこだわる: 使い古しの歯ブラシが便利ですが、ナイロン製のネット型フィルターの場合、毛先が硬すぎたり広がっていたりするブラシで強くこすると、ネットの繊維を傷つけて毛羽立たせてしまいます。毛羽立ちは新たなゴミ詰まりの原因になるため、柔らかめのブラシで優しく撫でるように洗うのがコツです。
  3. カセット式は「揺らし洗い」: プラスチックケース型のフィルターは、ゴミを捨てた後、水を張った洗面器の中に沈め、水中で激しく揺すってください。こうすることで、メッシュの隙間に入り込んだ見えない微粒子が浮き出てきます。

各社洗濯機の糸くずフィルターの仕組みと特徴

カセット式の糸くずフィルターを開けてゴミ箱にワンタッチでゴミを捨てている様子
家電ジャーナル:イメージ画像

国内の主要メーカーは、ユーザーの「掃除が面倒」「触りたくない」というペインポイント(悩み)を解決するために、独自の特許技術や設計思想を投入しています。ここでは主要メーカーの特徴的な機能と、それを踏まえたメンテナンス知識を紹介します。

パナソニック等のメーカー別特徴

パナソニックの縦型洗濯機で特に評価が高いのが「楽ポイフィルター」です。僕も実際に触ってみて、その簡単さに驚きました。従来のネット型フィルターは、濡れてへばりついた糸くずを指でつまんで引き剥がす必要があり、指先が汚れる上に感触も不快でした。

しかし、楽ポイフィルターは大きく開く樹脂製のケース形状を採用しており、蓋を開けてゴミ箱の上で逆さにして振るだけで、ゴミが「ポロッ」と塊になって落ちてきます。

この仕組みの裏には、緻密な計算があります。まず、ケース内部のリブ(突起)構造が、水流によって集まったゴミを一箇所に圧縮するように誘導します。さらに、樹脂の表面には親水性(水になじみやすい性質)などのコントロールが施されていると推測され、濡れたゴミがケース壁面に張り付く力を弱めています。これにより、「手を汚さずに捨てられる」という体験を実現しているのです。

一方、東芝(TOSHIBA)の洗濯機は、独自の洗浄技術「ウルトラファインバブル洗浄」を搭載している機種が多く、強力な水流が特徴です。そのため、フィルターにも高い耐久性と捕集能力が求められます。

東芝の上位機種では、カセット式フィルターに「抗菌・防臭加工」が施されており、さらにメッシュ部分にステンレス素材を採用しているモデルもあります。ステンレスはプラスチックやナイロンに比べて表面が滑らかで汚れが引っ掛かりにくく、カビの根も張りにくいため、清潔さを保ちやすいという大きなメリットがあります。

穴なし槽など特殊な構造のメリット

穴なし槽など特殊な構造のメリット(シャープ公式サイトより引用した画像)
出典:シャープ公式サイト

シャープの縦型洗濯機といえば、業界で唯一の「穴なし槽」が代名詞です。洗濯槽の側面に脱水用の穴が開いていないこの構造は、黒カビが槽内に侵入しにくいことや、節水性能が高いことで大人気ですが、実は糸くずフィルターの役割に関しては、他社製品とは全く異なるシビアな環境にあります。

通常の「穴あり槽」の洗濯機では、脱水時に高速回転による遠心力で水が槽の側面の穴から外へ抜けていきます。このとき、水と一緒に微細な糸くずの一部も穴を通って外槽へ排出されます(これが排水ホース詰まりの原因にもなるのですが)。つまり、フィルターで取りきれなかったゴミの一部は、脱水によって強制的に排出されるルートがあるのです。

しかし、シャープの「穴なし槽」は、脱水時も水は槽の上部からしか抜けません。遠心力で水は壁を登って上から溢れ出ますが、比重の重いゴミや、底の方に沈んでいる異物は、上まで登りきれずに槽内に残留しやすい傾向があります。もし、ここで糸くずフィルターが詰まっていたり、破損していたりするとどうなるでしょうか。

ゴミの逃げ場が完全に失われます。行き場を失ったゴミは、脱水が終わった後の洗濯物の表面に全て降り注ぐことになります。つまり、穴なし槽においてフィルターの不具合は、即座に「再付着トラブル」に直結するのです。

「穴なし槽だからカビないしメンテナンスフリー」と思っている方もいるかもしれませんが、ことフィルターに関しては、他社製品以上に小まめな点検と清掃が必須であることを覚えておいてください。

すぐ詰まる場合の対処法と予防策

「掃除してきれいにしたはずなのに、次の洗濯ですぐに目が詰まって水が溢れている」「ネットは破れていないのに水が通らない」。このような不可解な現象に悩まされている場合、犯人は糸くずではなく、目に見えない「透明な膜」である可能性が高いです。

その正体は、柔軟剤や洗剤に含まれる成分が結合してできた「酸性石鹸(スカム)」や、シリコンなどのコーティング成分です。特に、香りを残そうとして規定量以上の柔軟剤を使っている場合や、冷たい水で粉末洗剤を使っている場合に発生しやすくなります。

これらの成分がメッシュの繊維一本一本をコーティングして太らせたり、微細な網目を塞いだりすることで、見た目はきれいなのに水を通さない「閉塞状態」を作り出します。

これを解消するには、物理的にこするだけでは不十分です。食器用洗剤(中性洗剤)をつけて歯ブラシで丁寧に洗うことで、油分を含んだ被膜を落とすことができます。それでも改善しない場合は、後述する酸素系漂白剤でのつけ置きを行い、化学的に分解する必要があります。

また、ドラム式洗濯機で「排水フィルター(糸くずフィルター)」が頻繁に詰まる、あるいは詰まっていないのに「排水エラー」が出る場合は、フィルターの奥にある排水弁や排水ホース、さらには排水口(トラップ)自体が詰まっている可能性があります。フィルターはあくまで入口に過ぎません。

その先が詰まっていれば、当然水は流れません。この場合、フィルター掃除だけでは解決しないため、排水経路全体の大掃除が必要です。

漂白剤を使った徹底洗浄で清潔に

洗面器に張ったお湯と酸素系漂白剤の泡の中に糸くずフィルターをつけ置きしている様子
頑固な黒カビやぬめりには、酸素系漂白剤を使ったつけ置き洗いが効果的です。

通常の水洗いやブラシ洗いだけでは、どうしても落としきれない汚れがあります。それが、メッシュの繊維の奥深くに浸透した黒カビの菌糸や、頑固に固着したバイオフィルムです。これらをリセットするために、僕は月に一度程度の「酸素系漂白剤によるつけ置き洗浄」を強く推奨します。

使用するのは、ドラッグストアなどで手に入る「衣類用の酸素系漂白剤(粉末タイプ)」です。「オキシクリーン」などが有名ですね。

主成分である過炭酸ナトリウムは、お湯に溶かすと活性酸素を放出し、その強力な酸化力で色素や菌を分解します。同時に激しく発泡するため、その泡の力でメッシュの目に詰まった汚れを物理的に浮き上がらせる効果も期待できます。

【完全版】フィルターつけ置き洗浄方法

  1. お湯の準備: 洗面器やバケツに、40℃〜50℃程度のお湯を張ります。お風呂の残り湯くらいの温度では効果が薄いので、給湯器の設定を上げるか、少し熱めのお湯を用意してください。
  2. 漂白剤を溶かす: お湯2リットルに対して、大さじ1〜2杯程度の酸素系漂白剤を入れ、よくかき混ぜて溶かします。
  3. つけ置き: 糸くずフィルターを完全に沈めます。浮いてくる場合は、重しをするか、途中で裏返してください。このまま30分〜1時間ほど放置します。
  4. 仕上げ洗い: 時間が経ったら取り出し、古歯ブラシで軽くこすりながら流水ですすぎます。驚くほど汚れがスルッと落ち、新品のような白さが蘇るはずです。

注意点として、キッチン用などの「塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)」の使用は慎重に行ってください。

除菌力は最強ですが、酸化力が強すぎて、ナイロンやポリエステル製のネットを加水分解(化学的に分解)させ、ボロボロに脆くしてしまうリスクがあります。

「カビキラー」などは最終手段とし、日常的なケアには酸素系を使うのが、フィルターの寿命を延ばすコツです。

ネットの交換時期と購入方法の注意点

どんなに丁寧にメンテナンスをしていても、糸くずフィルターは永久に使える部品ではありません。メーカーも消耗品として扱っています。では、どのタイミングで新品に交換すべきでしょうか。

交換すべき危険サイン

  1. ネットの破れ・ほつれ: 小さな穴でも開いていれば、機能はゼロに等しいです。即交換が必要です。
  2. プラスチック枠の破損: 爪が折れている、ヒビが入っている、変形して本体にカチッとはまらない場合は、そこからバイパス流が発生するため交換対象です。
  3. 黒ずみが取れない: 漂白しても落ちない黒ずみは、素材自体がカビによって変質している証拠です。衛生面を考えて交換しましょう。
  4. ネットが薄くなっている: 向こう側が透けて見えるほど繊維が痩せていると、水流の圧力で破れる寸前です。

交換部品を購入する際、家電量販店に行っても在庫がないことがほとんどです。取り寄せになるとまた来店する手間がかかります。一番確実で早いのは、インターネット通販です。Amazon、楽天市場、ヨドバシ.comなどの大手ECサイトで、お使いの洗濯機の「型番」と「糸くずフィルター」というキーワードを組み合わせて検索すれば、すぐに見つかります。

価格は数百円〜千円程度と比較的安価です。送料がかかる場合もあるので、予備を含めて2〜3個まとめて買っておくのも賢い方法です。また、最近は100円ショップなどで「汎用(はんよう)取り替えネット」も売られていますが、枠のサイズが微妙に合わなかったり、装着が甘くて外れてしまったりするトラブルも多いため、個人的にはメーカー純正品の使用を強くおすすめします。

糸くずフィルターの仕組みに関するQ&A

Q:仕組み上、フィルター掃除は毎回必要ですか?

はい、「洗濯のたびに毎回」が必須です。

縦型・ドラム式を問わず、フィルターは一度の洗濯で大量の汚れを「物理的に遮断して溜め込む」仕組みになっています。これを放置すると、湿った環境で雑菌が爆発的に繁殖し、バイオフィルム(ぬめり)を形成してしまいます。乾燥して固着すると掃除が困難になるため、濡れているうちに捨てるのが最も効率的で衛生的です。

Q:循環の仕組みがあるのにゴミが取れないのはなぜ?

最も多い原因は「水位設定」です。

縦型洗濯機の循環濾過システムは、水がフィルターの吸込口の高さまで達していないと機能しません。少量の洗濯物で低水位モードを使っている場合、水がフィルターを通らずにバイパスしてしまっている可能性があります。水量を一段階上げるだけで、劇的に改善することが多いですよ。

Q:フィルターの仕組み上、ネットの破れは致命的?

はい、致命的です。

流体力学的に、水は「抵抗の少ない場所」を選んで流れます。フィルターの網目よりも、破れた穴の方が圧倒的に通りやすいため、水流はそこへ集中します。その結果、一度捕集したゴミまで穴から再放出してしまい、フィルターとしての役割を全く果たさなくなります。小さな穴でも即交換が必要です。

Q:ドラム式の排水フィルターの仕組みと掃除頻度は?

ドラム式のフィルターは、「排水ポンプを守るためのトラップ」という仕組みになっています。

ここが詰まると排水ができなくなり、エラー(U11など)で洗濯機が停止してしまいます。縦型のように「ゴミが取れないだけ」では済まないため、基本的には洗濯のたび、少なくとも週に1回は必ず清掃して、排水経路を確保する必要があります。

洗濯機の糸くずフィルターの仕組みについてまとめ

今回は、洗濯機の糸くずフィルターの仕組みについて深掘りしてきました。たかがゴミ受けと思われがちですが、縦型では「洗浄品質」を、ドラム式では「排水機能と安全」を守るという、非常に重要な役割を担っています。

仕組みがわかれば、なぜ「水位」が重要なのか、なぜ「こまめな掃除」が必要なのかが納得できるはずです。「ゴミが取れない」「臭いがする」といったトラブルは、フィルターからのSOSサインです。

もし今、ゴミが取れずに悩んでいるなら、まずはフィルターの徹底洗浄か交換を試してみてください。それだけで、洗濯の仕上がりが驚くほど変わるかもしれませんよ。