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こんにちは。家電ジャーナルの鈴木です。
お風呂上がりのリラックスタイム、気持ちよく髪を乾かしている最中に突然「ジジジッ!」という異音とともに髪の毛がドライヤーに引っ張られる……。あの瞬間の恐怖といったらありませんよね。「痛い!」と思った時にはもう遅く、焦げ臭いにおいが漂ってきて、パニックになってしまう方も多いはずです。
僕自身も過去に、愛用していたドライヤーで同じ経験をしました。その時は知識がなく、慌てて無理やり引っ張ってしまい、頭皮を痛めたうえにドライヤーまで壊してしまったという苦い思い出があります。
実はこのトラブル、単なる不注意だけではなく、ドライヤーの構造的な寿命や日頃のメンテナンス不足が深く関係していることが多いんです。
「どうにかして髪を取りたい」と焦る気持ちは痛いほどわかりますが、自己流で分解したり、無理に引き抜いたりするのは絶対にNGです。最悪の場合、感電や火災といった取り返しのつかない事故につながる恐れさえあります。
この記事では、そんな緊急事態に直面した時の正しい「物理的な取り方」から、二度と同じ痛みを味わわないための予防策、そしてメーカーごとの対応の違いまで、家電専門家の視点で徹底的に解説します。
この記事に書いてあること
- 髪が巻き込まれた直後に絶対やるべき緊急停止と冷却の具体的な手順
- 「髪を切る」か「時間をかけて解く」かを判断する明確な基準ライン
- ピンセットでの除去や自己分解がなぜ危険で、保証対象外になるのかという理由
- 主要メーカーごとの構造比較と、修理に出すか買い替えるかの損益分岐点
緊急時のドライヤー髪の毛巻き込み取り方と対処

まずは一度深呼吸をして、落ち着いてください。今まさに髪が巻き込まれて痛みや焦りを感じているなら、最優先すべきは「安全に停止させること」です。
髪を救うことよりも、まずはあなたの身体と家を守るための行動をとってください。ここでは、巻き込み事故が発生した直後に取るべき具体的なアクションフローと、絶対にやってはいけないNG行動について詳しく解説します。
焦げ臭い時は直ちに電源を切り冷却

髪が巻き込まれたその瞬間、痛みに驚いて反射的にドライヤーを頭から引き剥がそうとしていませんか? それは一番やってはいけない行動です。髪が内部のファンシャフトに絡みついている状態でドライヤーを引っ張ると、髪が毛根から引き抜かれるか、あるいは頭皮が裂傷を負うリスクがあります。
まず最初に行うべきは、物理的に「モーターの回転を完全に止めること」です。手元のスイッチをOFFにするのが基本ですが、パニック状態では指が滑ったり、スイッチの位置がわからなくなったりすることがあります。
また、内部でショートが起きている場合、スイッチ操作が効かないことも考えられます。そのため、最も確実で推奨される方法は、コンセントから電源プラグを引き抜くことです。
電源を遮断することで、モーターへの電力供給が断たれ、回転エネルギーがゼロになります。同時にヒーターへの通電も止まるため、さらなる加熱を防ぐことができます。
しかし、ここで安心してすぐに髪を引き抜こうとしてはいけません。ドライヤー内部のヒーターは、通電を止めてもしばらくの間は数百度という高温を維持しています(余熱)。
髪の毛の主成分であるケラチンタンパク質は熱に非常に弱く、高温にさらされると「熱変性」を起こして硬くなったり、溶けて周囲のプラスチック部品に固着したりします。「焦げ臭い」においがしている場合、すでに髪の一部が炭化または燃焼している可能性が高いです。
この状態で無理に動かすと、溶けた髪が接着剤のように張り付いて取れなくなるばかりか、高温部が頭皮に接触して深刻な火傷を負う危険性があります。
緊急対処の鉄則:5分間の冷却タイム
焦げ臭いにおいは「燃焼」のサインです。電源を抜いたら、そのままの体勢で(可能であればドライヤーを頭皮から浮かせないように支えながら)最低でも3分〜5分間は待機してください。
内部温度が下がり、熱変性が落ち着くのを待つことが、結果的に髪へのダメージと二次被害を最小限に抑えるコツです。
髪の毛を切るべきか解くかの基準

十分な冷却時間を置いた後、いよいよ髪を外す作業に入ります。ここで多くの人が「髪を切りたくない」という一心で無理に解こうとしますが、状況によっては潔く切断を選んだ方が、結果的に被害を小さくできるケースがあります。
現状を冷静に観察し、以下の基準に基づいて「解く」か「切る」かを決断してください。
| 状況レベル | 推奨される対処 | 判断のポイントと具体的な行動 |
| レベル1:浅い巻き込み | 解く | 吸込口のフィルター越しに髪が見えており、頭皮が強く引っ張られていない状態です。 髪がまだファンの軸に深く食い込んでいないため、モーターの回転方向とは逆(通常は時計回りが多いですが、機種によります)に、髪を優しく「送り出す」ように動かしてみましょう。 無理に引っ張るのではなく、たるみを持たせてスルスルと抜ける感覚があれば、そのまま救出可能です。 |
| レベル2:深い巻き込み | 切断 | 髪が内部のファン軸にガッチリと巻き付き、少し動かしただけで頭皮に激痛が走る場合です。 これは髪が何重にも重なって締め付けられている状態(ラチェット状態)です。 ここで無理をすると毛根へのダメージが深刻化します。「髪はまた伸びる」と割り切り、ハサミを用意しましょう。 |
| レベル3:焦げ付き・炭化 | 切断 | 髪が熱で溶けて固まっている、あるいは炭のようにボロボロになっている場合です。 これは化学変化による固着なので、物理的に解くことは不可能です。 異臭の原因となる炭化部分を即座に切り離す必要があります。 この状態の髪を温存しても、キューティクルは死滅しており修復はできません。 |
安全に切断するためのテクニック
切断を選択した場合、二次被害として怖いのがハサミによる怪我です。頭皮とドライヤーの隙間は非常に狭くなっていることが多いため、以下の手順で行うことをおすすめします。
- スペーサーを入れる: 頭皮と絡まっている髪の間に、薄いコーム(櫛)や、なければ自分の指をしっかりと差し込みます。これが刃から頭皮を守るスペーサーになります。
- ドライヤー側で切る: コームよりもドライヤー側(吸込口に近い方)にハサミの刃を入れます。
- 少しずつ切る: まとめて切ろうとせず、少しずつ束を分けて切断してください。
「大切な髪を切るなんて……」とショックを受けるかもしれませんが、頭皮の怪我や火傷に比べれば、髪の毛先のダメージは軽微です。ここでは身体の安全を最優先するという心理的な切り替えが求められます。
分解せずに除去する正しい掃除法

髪が無事に抜けたら、あるいは抜けずにちぎれてしまった場合、次はメンテナンスです。ドライヤー内部に残った髪の毛やホコリを放置して使い続けると、発火や故障の原因になります。しかし、ここで「中を開けて掃除したい」という衝動に駆られてはいけません。
メーカー(パナソニックやテスコム、シャープなど)が公式に推奨している掃除方法は、実は非常にシンプルで安全なものです。基本的には「外から吸い取る」か「表面を掻き出す」かの二択しかありません。
メーカー推奨の「吸い出し」メソッド
最も効果的で安全なのは、家庭用の掃除機を使う方法です。以下の手順で行ってください。
- 完全乾燥を確認: まず、電源プラグが抜かれていることを確認します。
- 掃除機の準備: 掃除機の先端に「隙間用ノズル」または「ブラシ付きノズル」を取り付けます。
- 吸引: ドライヤーの吸込口(フィルター部分)にノズルを垂直に当て、スイッチをONにします。最強モードで吸引することで、フィルターの目に詰まった微細なホコリや、内部で遊離している短い髪の毛を吸い出すことができます。
- 表面のブラッシング: 吸い取れなかった頑固なホコリは、使い古した乾いた歯ブラシや綿棒を使い、円を描くように優しく擦って浮かせます。その後、再度掃除機で吸い取ります。

具体的な掃除の手順や、絶対にやってはいけないNG行動(エアダスターなど)については、別記事のドライヤーのホコリの取り方決定版!掃除しないとどうなるかも解説でさらに詳しく紹介しています。
写真付きで解説しているので、もし「すでにホコリが詰まっているかも」と不安な方は、あわせてチェックしてみてください。
絶対NGな掃除方法:水洗いと濡れ雑巾
一部の機種(ダイソンのフィルターカバーなど)を除き、ドライヤーの本体や吸込口を水洗いすることは厳禁です。
また、濡れた雑巾やウェットティッシュで拭くのも避けてください。
水分がメッシュの隙間から内部に侵入すると、モーターやヒーターユニットの錆びつきを招くだけでなく、次回の通電時にショートして「バチッ!」と火花が飛ぶ危険性があります。
メンテナンスは必ず「乾いた状態」で行うのが鉄則です。
ピンセット等の裏技に潜むリスク
インターネット上の掲示板やSNS、動画サイトなどを検索すると、「分解せずに奥の髪を取る裏技」として、ピンセットやヘアピン、かぎ針(レース編み用)などを使って隙間からほじくり出す方法が紹介されていることがあります。
一見、名案のように思えるかもしれませんが、僕はこれを強く非推奨とさせていただきます。理由はシンプルで、リスクがリターンに見合わないからです。
見えない内部をまさぐる恐怖
吸込口のメッシュの隙間から細い工具を差し込む行為は、目隠しをして手術をするようなものです。内部には、高速回転するための精密なバランス調整が施された「ファンブレード(羽根)」や、電流が流れる「ヒーター線」、そしてそれらを絶縁するための「マイカ板(雲母)」などが高密度で配置されています。
- ファンの破損: プラスチック製のファンは意外と脆く、金属製のピンセットが少し触れただけで傷がついたり、欠けたりします。わずかな欠けでも回転バランスが崩れると、使用時に激しい振動や「ガガガ」という異音が発生し、最終的にはファンが粉砕する事故につながります。
- 絶縁破壊と感電: 内部の絶縁コーティングを工具で傷つけてしまうと、本来流れてはいけない場所に電気が流れるようになります。これが漏電やショートの原因となり、使用中にハンドル部分まで熱くなったり、最悪の場合は感電したりする可能性があります。
目に見える範囲の髪をつまんで取る程度なら許容範囲ですが、奥の方まで工具を突っ込んで探る行為は、ドライヤーの寿命を自ら縮める行為に他なりません。
自分で分解修理を行うことの危険

「ネジを数本外してカバーを開ければ、絡まった髪なんて一発で取れるじゃないか」——機械いじりが好きな方なら、そう思うかもしれません。
しかし、ヘアドライヤーに関しては、その好奇心が命取りになります。国内で正規に販売されている全てのドライヤーの取扱説明書には、必ず「分解・改造禁止」という警告マークが記載されています。
特殊ネジによる物理的なロック
試しにお手持ちのドライヤーのネジ穴を見てみてください。多くの製品(特にパナソニックなどの大手メーカー製)では、一般的なプラスドライバー(十字)やマイナスドライバーでは回せない、「三角ネジ(トライアングル)」や「星型ネジ(トルクス)」、あるいは中央に突起がある「いじり止めネジ」が採用されています。
これはメーカーによる明確な意思表示です。「専門知識を持たないユーザーは絶対に開けてはいけない」というフールプルーフ(誤使用防止)設計の一環なのです。
専用工具をネットで取り寄せて無理にこじ開けようとすると、ネジ山を潰してしまったり、プラスチックの筐体(ボディ)の噛み合わせ爪を折ってしまったりして、二度と元に戻せなくなります。
気密性と配線の複雑さ
現代のドライヤー、特にナノケアやイオニティといった高機能機種は、内部が非常に複雑です。イオン発生ユニットの高電圧回路や、温度センサーへの極細配線が、まるでパズルのように隙間なく詰め込まれています。
素人が分解して再組み立てを行う際、最も多いミスが「配線の噛み込み」です。筐体を閉じる際に配線を挟んでしまい、被覆が破れて銅線が露出する。その状態でコンセントに繋げば、ショートして発火します。
公的機関からの警告
製品評価技術基盤機構(NITE)などの公的機関も、理美容家電の発火事故について多数の事例を報告しており、構造を理解しない分解や修理が火災につながるとして強く注意を喚起しています。
一度でも分解した製品はメーカー保証の対象外になるだけでなく、万が一事故が起きてもPL法(製造物責任法)による保護を受けられなくなるリスクがあります。
再発防止とドライヤー髪の毛巻き込み取り方の知識
一度怖い思いをしたら、二度と同じ事故は起こしたくないですよね。
ここからは、そもそも「なぜ髪が吸い込まれてしまうのか」という物理的なメカニズムや、製品の寿命との関係、そしてメーカーごとの特徴について、もう少し専門的な視点も交えながら深掘りしていきます。
敵を知れば、対策も見えてきます。
髪が吸い込まれる原因とメカニズム

「自分は気をつけているつもりだったのに、なぜ?」と思うかもしれませんが、ドライヤーの吸気メカニズムを知ると、それが誰にでも起こりうる現象であることがわかります。
ドライヤーは、後方の「吸込口(インレット)」から大量の空気を取り込み、内部のヒーターで温めて前方の「吹出口(アウトレット)」から放出するという単純な構造です。流体力学的に見ると、吸込口付近の空気の流れは「シンク流れ(吸い込み流れ)」と呼ばれ、中心に向かって全方向から空気が収束します。
この吸い込みの力は、距離の二乗に反比例して強くなります。つまり、吸込口から10cm離れている時と比べて、5cmの距離では吸引力が4倍、2cmまで近づくと25倍以上にも跳ね上がるのです。この急激なパワーゾーン(Suction Zone)に、髪の毛のような軽くて細い繊維が入るとどうなるでしょうか。
- ドラッグ力(抗力)の発生: 空気の流れに乗った髪には強力なドラッグ力がかかり、重力や髪のコシを無視して、一瞬で内部へと引きずり込まれます。
- 静電気の悪戯: 特に冬場の乾燥した時期は、髪が静電気を帯びて広がります。ドライヤー本体もプラスチック製で帯電しやすいため、まるで磁石のように髪が吸込口へ吸い寄せられてしまうことがあります。
- ラチェット効果: 濡れた髪はキューティクルが開いており、表面がザラザラしています。これがファンに絡まると、釣り針のカエシのように機能し(ラチェット効果)、一度入ったら逆方向には抜けにくい状態を作り出してしまいます。
焦げ臭い異臭が続く場合の寿命判断
巻き込まれた髪を取り除いたはずなのに、使うたびに「なんだか焦げ臭い……」と感じることはありませんか? それはドライヤーが発している「助けて!」という悲鳴、あるいは「もう限界です」という遺言かもしれません。焦げ臭さの正体は、主に以下の3つのパターンのいずれかです。
1. 有機物の残留燃焼
取り切れなかった微細な髪の破片や、長年蓄積したホコリ(主成分は人間の皮膚片や繊維くず)が、高温になったヒーターエレメントに接触して燃えている状態です。髪の毛に含まれる硫黄分が燃えると、独特の鼻をつく刺激臭がします。
2. 通気不足による樹脂の過熱
フィルターの掃除をサボっていて目が詰まっていると、吸入される空気の量が減ります。ドライヤーのヒーターは「風が通ることで冷やされる」ことを前提に設計されているため、風量不足になると異常高温になります。その結果、本体内部のプラスチックパーツが熱で溶けたり焦げたりして、化学的な異臭を放ちます。
3. モーターの電気的寿命
これが最も深刻なケースです。一般的なドライヤーに使われているDCモーターやACモーターには、「カーボンブラシ」という部品が入っています。これは使用とともに摩耗する消耗品です。
ブラシがすり減って限界に達すると、回転するたびに内部で「バチバチ」という火花(アーク放電)が散り始めます。この時、オゾン臭に近い特有の電気的な焦げ臭さが発生します。
一般的なドライヤーの寿命は、使用頻度にもよりますが約3年〜4年(時間換算で約130〜140時間)と言われています。もし、あなたが今のドライヤーを3年以上使っていて、掃除をしても焦げ臭さが消えないのであれば、それはメンテナンスで直るレベルを超えています。
発火事故が起きる前に、寿命と割り切って買い替えを検討すべき明確なタイミングです。
巻き込み防止対策と安全な使い方

「もう二度とあんな怖い思いはしたくない……」
一度でも髪の毛の巻き込み事故を経験すると、ドライヤーを使うこと自体が少し怖くなってしまいますよね。でも、安心してください。巻き込み事故は「運」ではなく、物理的な要因で起こるものです。つまり、正しい対策と使い方さえマスターすれば、リスクはほぼゼロに抑えることができるのです。
ここからは、今日からすぐに実践できる具体的な予防策と、安全なドライヤー操作の「型」について解説します。
科学的根拠に基づく「10cmルール」の徹底
事故を防ぐための最大の防御策、それは「吸込口から髪を10cm以上離す」というシンプルなルールです。これはパナソニックなどの主要メーカーも取扱説明書で強く推奨している基準ですが、実はこれには流体力学的な根拠があります。
ドライヤーの吸込口付近では、空気が急激に加速されています。しかし、この吸引力は距離をとることで劇的に弱まります。目安として10cm離せば、髪が吸い寄せられる力(ドラッグ力)は、髪の重さやコシの方が勝るレベルまで低下します。逆に言えば、5cm以内に入ると危険域、3cm以内は「いつ巻き込まれてもおかしくないレッドゾーン」だと思ってください。
「10cm」の感覚を掴むコツ
ドライヤーを持っている腕を「軽く曲げた状態」ではなく、「肘をしっかり伸ばし気味にする」のがコツです。特に後頭部を乾かす時は、ドライヤーが見えないため無意識に近づきがちです。
腕を大きく使い、遠くから風を送るイメージを持ちましょう。
「ながらドライ」をやめる勇気
意外と多いのが、スマートフォンの画面を見ながら、あるいはテレビを見ながら髪を乾かす「ながらドライ」による事故です。視覚が画面に集中していると、手元の距離感が狂い、無意識のうちにドライヤーが頭に接近してしまいます。
特に、スマホ片手にドライヤーを持つと、片手操作になるためドライヤーの制御が雑になりがちです。髪を乾かす時間は、長くても5分〜10分程度。この時間だけは画面から目を離し、鏡でドライヤーの位置を確認しながら乾かすことに集中してください。それだけで、事故率はグンと下がります。
髪のコンディションを整えて摩擦を減らす
乾燥してパサついた髪や、静電気を帯びた髪は、フワフワと広がって吸込口に吸い寄せられやすくなります。これを防ぐために以下のケアも有効です。
- タオルドライをしっかり行う: ドライヤーの使用時間を短縮し、リスクに晒される時間を減らします。
- 洗い流さないトリートメント: 髪の表面をコーティングして静電気を防ぎ、まとまりを良くすることで、意図しない髪の広がりを抑えます。
- 粗目のコームでとかす: 濡れた髪は絡まりやすいので、乾かす前に一度コームを通して流れを整えておくと、スムーズに乾燥できます。
パナソニック等のメーカー別特徴
一口にドライヤーと言っても、メーカーによって安全設計の思想やメンテナンスのしやすさは千差万別です。「次はどのメーカーを選べばいいの?」と迷っている方のために、主要メーカーごとの構造的な特徴と、巻き込みリスクに対するアプローチの違いを、僕の視点で分析してみました。
Panasonic(パナソニック):ナノケア・イオニティ
特徴:
国内シェアトップクラスを誇るパナソニックは、やはり安全基準が非常に厳格です。取扱説明書には「吸込口から10cm以上」「吹出口から3cm以上」という具体的な数値基準が明記されており、ユーザーへの啓発に力を入れています。
構造上の注意点:
多くのモデルで、吸込口のフィルター(網)が本体と一体化しており、取り外しができません。そのため、網目にホコリが詰まっても水洗いができず、こまめに掃除機やティッシュで表面のホコリを取る必要があります。この「掃除の手間」を惜しむと、風量が落ちて内部過熱につながりやすいので注意が必要です。
Dyson(ダイソン):Supersonic Ionic / Airwrap
特徴:
「吸引の常識」を覆したのがダイソンです。従来のドライヤーはヘッドの後方にモーターがありましたが、ダイソンは超小型の強力なデジタルモーター(V9など)をハンドル部分(持ち手)に内蔵しました。これにより、ヘッド部分は空洞になり、物理的に「後方から髪を巻き込む」という事故が構造上起こりえなくなりました。
メンテナンス性:
ハンドル下部にある吸気口カバーは、マグネットやひねる動作で簡単に取り外しが可能。フィルター自体を水洗いできるモデルもあり、清潔を保ちやすいのがメリットです。ただし、センサーが非常に優秀(敏感)なので、フィルターが少しでも詰まると安全装置が働いて動作が止まります。「止まる=掃除のサイン」と捉えられる人には最適です。
Tescom(テスコム) / Nobby
特徴:
美容室でよく見かけるプロ用ブランド「Nobby」を展開するテスコムは、耐久性とメンテナンス性のバランスが抜群です。プロの現場では毎日過酷に使われるため、壊れにくく、掃除しやすい設計が徹底されています。
おすすめポイント:
家庭用モデル(TIDシリーズなど)でも、吸込口に「高性能フィルター」を採用している機種が多く、細かいホコリや髪の毛の侵入を強力にブロックしてくれます。また、万が一故障しても部品単位での修理対応がしっかりしており、修理コストも比較的リーズナブルなのが嬉しいポイントです。
Sharp(シャープ):プラズマクラスター
特徴:
シャープの強みは、なんといっても「プラズマクラスター」による静電気除去能力です。静電気を抑えることで髪の広がりを防ぎ、結果として吸込口への吸い寄せリスクを減らすという、化学的なアプローチで安全性を高めています。
最新のドレープフロードライヤーなどは、ノーズが短く操作性が良いため、腕を伸ばさなくても適切な距離を保ちやすいデザインになっています。
修理代金と買い替えの判断ライン

愛着のあるドライヤーが故障した時、「修理して使い続けるか、思い切って買い替えるか」は非常に悩ましい問題ですよね。特に高級ドライヤーを使っている場合はなおさらです。
ここでは、感情論ではなく「経済合理性」と「安全性」の観点から、冷静な判断を下すための基準を提示します。
| 経過年数 | 症状 | 推奨アクション | 判断の理由 |
| 1年未満 | 全般(過失除く) | 無償修理 | メーカー保証期間内です。保証書を探して、すぐに購入店かメーカー窓口に連絡しましょう。 ユーザー過失(落下など)でなければ無料で直ります。 |
| 1年〜3年 | 異音・異臭・コード発熱 | 修理検討 | 購入価格の50%以下で修理可能なら検討の余地あり。 ただし、コードの根本が熱いなどの症状は断線の前兆で危険なため、即使用中止してください。 |
| 3年〜4年 | 焦げ臭い・風量低下 | 買い替え推奨 | モーターのブラシ寿命(約130〜140時間)が近づいています。 今回修理しても、すぐに別の場所(ヒーターやスイッチ)が壊れる可能性が高く、コスパが悪いです。 |
| 5年以上 | どんな故障でも | 即時買い替え | メーカーの部品保有期間(通常5〜6年)が終了している可能性があります。 また、最新機種の省エネ性能や髪へのケア効果は5年前とは段違いです。安全のためにも新品にしましょう。 |
主要メーカーの修理費用相場(目安)
修理に出す前に、ざっくりとした相場感を知っておくと判断しやすくなります。
- Panasonic: 約3,000円〜10,000円強(故障箇所による)
- Dyson: 約22,000円(保証外の場合、一律料金プランが適用されることが多い)
- Tescom: 約2,000円〜5,000円(比較的安価)
- ReFa: 約13,000円〜28,000円(本体価格に応じて高額になる傾向)
特に、「焦げ臭いにおいが取れない」という症状に関しては、内部での炭化進行や発火リスクがあるため、使用年数にかかわらず「買い替え」を強く推奨します。火事になってからでは遅いですからね。
髪の毛の巻き込みに関するよくある質問
Q1. 髪の毛が奥に入り込んで取れない場合、そのまま使い続けても大丈夫ですか?
A. 絶対に使い続けないでください。内部で絡まった髪の毛が加熱されて焦げたり、ファンやモーターに負荷がかかり発火や故障の原因となります。目に見える範囲で取れない場合は、メーカー修理を依頼するか買い替えを検討しましょう。
Q2. ドライヤーを分解して、絡まった髪の毛を取り除いてもいいですか?
A. ご自身での分解は推奨されません。多くのメーカーで、分解した時点で保証対象外となります。また、元に戻せなくなったり、配線に触れて感電・ショートする危険性があります。ピンセットや掃除機で吸い出しても取れない場合は、無理をしないことが大切です。
Q3. 髪の毛を巻き込んだ後、焦げ臭いにおいがしますが故障でしょうか?
A. 内部に残った髪の毛がヒーターの熱で焼けている可能性が高いです。異臭がする状態で使い続けると、煙が出たり、最悪の場合は発火事故につながる恐れがあります。直ちに使用を中止し、電源プラグを抜いてください。
Q4. 再発を防ぐために、ドライヤーへの巻き込み防止策はありますか?
A. 主に3つの対策が有効です。①吸込口のフィルター(メッシュ)に溜まったホコリをこまめに掃除する、②使用時は髪から10cm以上離す、③吸込口が髪に近づきやすい「逆さ持ち」などを避ける、これらを意識するだけでリスクを大幅に減らせます。
Q5. 修理に出す場合、費用はどれくらいかかりますか?
A. メーカーや機種によりますが、一般的に3,000円〜8,000円程度が相場です。高級ドライヤーであれば修理する価値はありますが、安価なモデルの場合は修理費用の方が高くなるケースも多いため、新品への買い替えをおすすめします。
ドライヤーの髪の毛巻き込みの取り方を総括

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。今回は、ドライヤーの髪の毛巻き込み事故という、誰もが遭遇しうるトラブルへの対処法と予防策について深掘りしました。
髪が巻き込まれると、痛みと恐怖で頭が真っ白になるかもしれません。ですが、正しい知識さえあれば、冷静に対処して被害を最小限に食い止めることができます。
今回の記事の重要ポイント
- 緊急対応: 焦げ臭い時はスイッチ操作より先に「コンセントを抜く」。そして5分間冷却してから状況を確認する。
- 除去の判断: 髪が深く食い込んでいる場合や焦げ付いている場合は、身体の安全を優先して「髪を切る」決断をする。
- 絶対禁止: 分解やピンセットでの深追いはNG。見えない内部の破損は発火事故の元になる。
- 予防の鉄則: 「10cmルール」を徹底し、吸込口のホコリを定期的に掃除することが、あなたとドライヤーを守る最大の防御策。
ドライヤーは、私たちの生活になくてはならない便利な道具ですが、扱い方を間違えれば凶器にもなり得ます。
「たかがドライヤー」と侮らず、日頃のメンテナンスと安全な距離感を意識して、快適なヘアケアライフを送ってくださいね。もし今のドライヤーが焦げ臭いなら、それは新しい相棒を迎える良いタイミングかもしれません。